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御者と言うのは云わば「使用人」です。 そして、御者に馬車を駆らせているのは、当時では大夫以上の身分です。 その御者に、当時の名族中の名族「樊」氏がなっている。 なんて孔子は高い地位にあるのであろう。 読者にそう思わせるのが、第二加筆者の孟子の考えでした。 先に加筆した曾子の不手際で、危うくばれそうになった嘘を、上手く糊塗したつもりだったのでしょう。 ですから、この一文はでっち上げであり、樊遲も少なくともこの場面では存在していません。 このように、加筆だらけの論語ですから、丁寧に掘り起こしていかないと、危うく後世の改竄者に「洗脳」されてしまうのです。 次に進みます。 「孟武伯問孝、子曰、父母唯其疾之憂、」 孟武伯は先に出た孟懿子の息子です。 孟孫子の一族に対して、孔子が家庭教師として相対する場面はありえないことは、説明済みです。 おそらく、この場面も全くの架空かもしれません。 「親孝行の具体的な仕方を教えてくれ」という孟武伯に対し、年齢的にいっても曾子が返答したと思われます。「ご両親はひたすら身の上を気遣っています(だから、お体を大切にして下さい)」と返答しました。 推察するに、孟孫子は孟懿子の代で零落し、孟武伯は肩身の狭い思いをしていたのでしょう。そこで、「親の雪辱をするにはどうすれば良いか(これが最大の親孝行です)」と尋ねられた曾子、「つまらぬ陰謀に加担してはいけません」と答えたのです。 当時の孟孫子及びその内臣の曾子の置かれた立場がうかがえる一幕です。 (続く) 追記 真説「春秋」、真説「論語」、並びに真説「孔子」を、故宮崎市定先生に捧げます。
by 2-shikou
| 2008-01-25 23:27
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